感情をコントロールする方法

イントロダクション

一般の感情コントロール法を使ってもモヤモヤが残る理由

コロナ禍のニューノーマル、SDGs、5Gの普及などによって、時代が大きく変わろうとしています。そんな先行き不透明な時代の中で生きていると、どうしてもストレスを感じて、知らず知らずのうちに感情が乱れやすくなります。

そこで重要になってくるのが、感情のコントロールです。

感情のコントロールとして有名なものとしては、「アンガーマネジメント」があります。アンガー(怒り)をマネジメント(コントロール)する、という技術です。
他には、マインドフルネスなども、感情のコントロールに役立つ方法だと言えるかもしれません。

こういった様々な感情コントロール法はもちろん役に立ちますが、限界もあるのかな、という気がしています。

たとえば、アンガーマネジメントの評判としてよく耳にするのが、「それができたら苦労しないんだけどね」といった不満です。

具体例を挙げましょう。

アンガーマネジメントの本※には、「過去にとらわれない視点をもつ」ということが提案されています。(※『アンガーマネジメント入門』安藤俊介著、朝日文庫)

その一例として、次のような方法が書かれています。(※同書P.176~P.178)


例えば、「無視された」というのが自分の大きなトリガー思考の場合、これまでに「無視された」ことでつらい思いや悲しい思いをしてきました。だから、今でも「無視された」と思えば、そのつらさや悲しさを一瞬でも忘れたいために、怒りを持つのです。怒りはつらさ、痛み、悲しみなどをごまかしてくれる役割もしているからです。(中略)「無視された」と思っても、よく考えれば実はたいしたことないこともよくあります。(中略)トリガー思考の原因となった苦しみ、つらさ、悲しみは、あくまでも過去のこと。そう自分に言い聞かせて、今後はそれにとらわれすぎないようにしてください。


確かに、このように自分に言い聞かせることは効果があると思います。
ところが、少なからぬ人が、このような思考をすることに違和感を覚えています。
なぜ違和感を覚えるのかというと、心理カウンセリングで最も大事にされているプロセスが抜けているからです。
ひとことで言えば、「傷ついた心のケア」が欠けています。

なお、ここで補足しておくと、アンガーマネジメントは「基本的にはソリューションフォーカスアプローチ」だそうです(※同書P.169)。ソリューションフォーカスとは、日本語に訳すと「解決志向」となり、心理カウンセリングで用いられる心理療法のひとつです。

実は、心理療法には様々な種類や流派があり、それぞれに優れているのですが、実はそれぞれ限界もあって、どれかひとつだけですべてのケースに対応できるということはありません。そこで、最近の傾向としては、単一の心理療法の限界を克服するために、複数の心理療法のアプローチを統合的に活用する流れが広まってきています。

アンガーマネジメントが心理療法のひとつに立脚しているのであれば、限界があって当然であり、それによってアンガーマネジメントが役に立たないわけではない(むしろ役に立つケースは多い)ということです。

さて、先ほど「傷ついた心のケア」が欠けていると述べましたが、もう少し説明しましょう。

過去に「無視された」経験を持つ人が、それによって生じた苦しみにとらわれているときに、「無視されたと思っても、実はたいしたことではないことがよくある」「昔の無視された苦しみはあくまでも過去のことだ」と自分に言い聞かせるのは、『過去にとらわれている自分はダメだ』と無意識に自分を責め、自分を否定していることになります。

つまり、過去に傷ついたことがまだ癒えていないのに、追い打ちをかけるようにして自分で自分を傷つけているのです。

そのために、「それができたら苦労しないんだけどね」という感覚になったり、「頭ではわかるが、なんとなくモヤモヤが残る」という状態になるのです。

だからこそ、まずは「傷ついた心のケア」が必要となります。

心の傷を癒し、自尊心を回復させないことには、いくら正論を言われても、つい意固地になって、素直に受け入れられなくなってしまうのです。

具体的には、例えば次のように自分に語りかけます。

「無視されたら、誰だって傷ついて当然だよね」
「相当なつらい出来事だったのに、よく耐えてきたね」
「その心の傷を抱えながら、今までよくやってきたよね」

このような言葉を使って自分を肯定します。
傷ついた人の隣に寄り添って温かく見守るように、傷つきながらも頑張って生きてきた自分自身をねぎらうのです。

すると、心の中で感じていた苦しみがゆっくりやわらいでいきます。
そして、その安全な感覚を時間をかけてじっくり味わいます。

この取り組みによって、心の傷が徐々に癒されていくと、「無視されたと思っても、実はたいしたことではないことがよくある」「昔の無視された苦しみはあくまでも過去のことだ」といった言葉が、自分の中にすーっと入りやすくなります。

怒りの感情が湧いているときに、いきなり正論を自分自身に言い聞かせるのではなく、まずは自分を肯定し、ねぎらう。このプロセスを入れることが重要なのです。

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