感情をコントロールする方法

新・感情コントロール法では、感情が乱れる原因をどのように解消するのか?

従来の感情のコントロール法は対症療法

従来の感情コントロール法では、主に、行動レベル思考レベルのアプローチが用いられます。

乱れた感情は時間の経過とともに鎮まっていくものですが、行動によって感情を解放することで鎮静化が早まります。ですから、誰かに話を聞いてもらったり、気持ちを紙に書き出したり、深呼吸や瞑想をしたりといった行動レベルのアプローチは大変有効です。

また、感情はその人の考え方に結びついている場合が多いので、物事の見方を変えたり、客観的視点で自分の思考を見直したりといった思考レベルのアプローチも、乱れた感情を落ち着かせるためには有効です。

しかし、このような行動レベルと思考レベルのアプローチはあくまでも対症療法であり、根本的な原因は解消できていません。

根本的な原因が解消されない限り、何かあるたびに感情が乱れる状態がいつまでも続くことになります。

原因の解消まで扱う「新・感情コントロール法」

根本的な原因を解消するために、「新・感情コントロール法」では、精神分析や人間性心理学の理論を基に、思考や行動だけでなく、感覚やイメージを効果的に活用するアプローチも用います。

感情の乱れは、個人の人格や精神性につながっているので、そこもしっかりケアすることで、表面的ではなく深い部分での感情コントロールができるようになります。

このように、対症療法で終わらず、根本原因の解消まで扱うのが「新・感情コントロール法」です。

「新・感情コントロール法」では、私たちの心の中に存在する様々な"理想"に着目します。

"理想"は、私たちの成長を促進して成功に導く上で、とても重要な役割を担っています。"理想"があるからこそ、私たちは努力し、自分らしい人生を生きようとするのです。

ところが、"理想"は一方で、自分や他人や物事などを否定的・悲観的にとらえてマイナス感情が生じる要因になります。

例えば、「周囲の人と良い関係を築きたい」という"理想"を持つ人は、それを実現するように努めるので実際に良い人間関係を構築することができますが、その"理想"があるゆえに、他人から嫌われることを恐れ、「不安」「後悔」「自己嫌悪」といったマイナス感情が生じることがあります。

つまり、マイナス感情の根本的な原因は"理想"にあり、感情をコントロールするためには、"理想"の適切な扱い方を知る必要があるのです。

ところが、やっかいなことに、私たちは自分の"理想"を正確に把握できていません

というのも、"理想"には、自分ではっきり気づいているものから、まったく気づいていないものまで様々なレベルの"理想"があり、私たちは、自分で自分の"理想"をすべて明確にわかっていないのです。

だから、知らず知らずのうちに、"理想"によってマイナス感情が生じてしまうことになります。

そんな"理想"をわかりやすく整理して理解するために、私は、次のような"理想"の三層構造の心理モデルを考案しました。

"理想"の三層構造
  • 欲求レベル[ want, need ]
    「〇〇したい」
    「〇〇してほしい」
  • 信条レベル[ must, should ]
    「〇〇すべき」
    「〇〇でなければらならない」
  • 自我レベル( being, existence )
    「〇〇という人間でありたい」
    「(自分を)尊重されたい」
"理想"の三層構造における感情の乱れ
  • 欲求レベル ⇒ 欲求が満たされないことが原因で感情が乱れる
  • 信条レベル ⇒ 自分の信条体系に反することが原因で感情が乱れる
  • 自我レベル ⇒ 自己尊厳が脅かされることが原因で感情が乱れる
  • 「〇〇したい」「〇〇してほしい」といった"理想"(欲求レベル)は自覚しやすく、その"理想"が実現しなかったときに生じる感情の乱れは、発生原因が浅い(意識できる)ところにあるので、従来の感情コントロール法で十分効果が期待できます。
  • 「〇〇すべき」「〇〇でなければならない」「〇〇してはいけない」といった"理想"(信条レベル)は普段自覚しておらず、その"理想"が実現しなかったときに生じる感情の乱れは、その信条(価値観、人生観、主義主張など)の根深さによって大きくなります。従来の感情コントロール法では、意識下の浅い部分にある信条であれば対応可能ですが、自分でも自覚していない意識下の深い部分にある信条に起因する感情の乱れには対応できません。
  • 自分の"理想"が実現しないことで自尊心が傷ついたとき(たとえば、人格を否定されるようなことを言われたとき、自分を大切に扱われないと感じたときなど)の感情の乱れは最も激しいものとなり、従来の感情コントロール方法を使ってもせいぜい気休めにしか感じられず、効果は期待できません。


「新・感情コントロール法」では、信条レベルと自我レベルの"理想"も扱って根本的な原因を解消するので、今後同じような感情の乱れが再発しなくなります。

なお、"理想"の三層構造の心理モデル、および、欲求レベル・信条レベル・自我レベルの"理想"を扱う心理アプローチは、次に挙げる臨床心理の理論や技法を統合的に活用したものです。
精神分析・交流分析・自己心理学・人間性心理学・認知行動療法・論理情動行動療法・解決志向短期療法・家族療法・ゲシュタルト療法・フォーカシング・トランスパーソナル心理学・催眠療法・森田療法・内観法・マインドフルネス認知療法・自律訓練法 他