社会的に活躍している人に当てはまる「自己愛性パーソナリティー」とは?

社会的に活躍している人、成功をめざして頑張っている人ほど自己愛性パーソナリティーの可能性が高い?

 政治家、弁護士、医者、大学教授、トップアスリート、有名芸能人など、社会的に活躍している人は、自己愛性パーソナリティーの傾向が強いと言われています。さらに言えば、企業の経営者や、これから成功しようと頑張っている人もこの傾向が当てはまります。

 自己愛性パーソナリティーの心理的傾向としては、たとえば、次のようなものが挙げられます。

①上昇志向が強い
②賛美されることを好む
③注目の的でありたい
④学歴や年収や社会的地位に固執する
⑤ライバル(特に自分より同等以下だと思う人)の活躍が気になる
⑥他人からの評価がとても気になる
⑦恥や屈辱感に敏感
⑧傷つきやすい
⑨自分を大事に扱われないと激しく怒る
⑩他人の気持ちがわからない
⑪他人との深い交流が苦手

 実は、人は誰もが多かれ少なかれ自己愛性パーソナリティーの傾向を持っています。中でも、冒頭で示した社会的成功者やこれから成功をめざしている人ほど、よく当てはまっています。
 思い当たる人は、自分の自己愛性パーソナリティーについてよく考えてみるといいかもしれません。

自己愛性パーソナリティーの傾向が強い人の態度

 自己愛性パーソナリティーの特徴のひとつに「誇大自己」があります。
「私は偉い」「私は賢い」「私は美しい」「私は特別だ」と思いたがるのは、誇大自己の働きです。
 自己愛的な人は、誇大自己に突き動かされるようにして成功をめざし、自分を褒めてくれる人を求め続けます。
 つらくても苦しくても、続けるしか選択肢がないのです。

 自己愛性パーソナリティー傾向が強い人は、自分の思い通りにならないことがあると、次の反応を起こします。
①激しい怒りを他人にぶつける
②落ち込んで憂うつになって無気力になる
③現実逃避をして引きこもる(現実に向き合わない)

 自己愛性パーソナリティー傾向が強い人は、自分の満足のために他人を利用します。
 たとえば、自分のTwitter、facebook、Instagramのフォロワーのことを、自分という特別な人間のために存在する聴衆、自分の商品を売りつける見込み客としてしか見ていません。フォロワー数にこだわり、人数の増減で一喜一憂する人は注意したほうがいいかもしれません。

自己愛性パーソナリティー傾向が強い人は、自己愛が未成熟

 自己愛性パーソナリティーの傾向が強い人は、自己愛が未成熟であると考えられます。
 自己愛が未成熟な人ほど、次のような態度をとります。

①他人の成功を心から喜べず嫉妬する
②他人の成功を上から見下そうとする
③彼・彼女を情熱的に愛する自分を愛している
④手に入れたものには興味がなくなる。興味があるのはチャレンジしている自分だけ。

「パパ、ボク大発見したよ」
「ママ、ワタシかわいい?」
『幼児あるある』ですが、自己愛の成熟度と関係しています。幼児は自己愛が成熟していないので、「自分はすごい」「私は特別だ」とアピールして親から認められて、自己愛を満たそうとします。

 自己愛が成熟していない大人も同じことをします。周りにこのようなアピールする人はいませんでしょうか?

 自己愛が未成熟な人は、「他人より成功している自分」という理想に縛られていることで、失敗や平凡でいることへの恐怖があって、それが生きづらさにつながっています。
 自分の潜在的才能や特別性を証明することに必死で、無能な自分は一切許せないのです。

 人の自己イメージには、「理想化された自分」と「ダメな自分」があって、多くの人は、その間を行ったり来たりして、悦に浸ったり凹んだりします。 
 自己愛が未成熟な人は、この2つの自分に翻弄されがちです。
  大きな夢を描いたと思えば、ライバルと自分を比較して自信を失う、ということを繰り返します。

 自己愛が未成熟な人は、成功すればするほど不安になる場合があります。
「自分には本当は実力がなくて、いつかメッキがはがれてダメな自分が露呈してしまうのではないか」と心のどこかで不安に思っているのかもしれません。
 そして、その不安を払拭するためにさらに頑張り続けるのです。

自己愛が未熟な理由

 自己愛が未成熟な要因は、幼少期に無条件に愛された記憶が不足していることだと考えられています。
 親から無条件の愛を得られていないと感じる子どもは、親の期待に応えることで愛を得ようとしますが、大人になった今もこのパターンで生きているのです。

 幼少期に親から無条件に愛された記憶がない人は、「他人に必要とされる自分でありたい」という承認欲求が強くなります。
 そのため、常に他人の目が気になり、自分は優秀でなければならないという強迫観念にとらわれ、少しの失敗で挫折感や無力感が生じてしまうことになります。

 自己愛が未成熟な人は、過保護に育てられたと思われがちですが、むしろ、親から十分な愛を与えられずに育ってきたと考えられています。
 ただし、実際にそうだったとは限らず、本人の中では「自分は親から十分に愛されてこなかった」と無意識に感じてしまっているということです。

 自分の優秀性をアピールする人は、自分大好き人間だと思われがちですが、実は、肥大化した自尊心に振り回されて、自分を好きになれない人なのです。
 自分をよりよく見せなければならないと思うのは、「本当の自分は無価値な人間だ」という感覚が心のどこかにあるからかもしれません。

「ここにいる私は、本当の私ではない。本当の私はもっとすばらしく、自分が輝ける場所がきっとどこかにある」と自己愛が未成熟な人は考えがちです。
 しかし、「本当の私」はどこを探しても見つかりません。
 なぜなら、「本当の私」とは、どこかにいるのではなく、自分で努力して作り上げるものだからです。

自己愛を成熟させるための2つの課題

 自己愛は、幼少期に親から十分に愛されることによって心の中で育っていく、と言われています。
 無条件で愛されることで「自分はOKなんだ」という感覚が根づいていくのです。
 残念ながら無条件で愛された記憶がない人は、常に誰かの期待に応えようとして生きることになっていきます。

自己愛が未成熟な人の課題①「等身大の自分を認めること

 自己愛が未成熟な人の課題1つ目は、「等身大の自分を認めること」です。
 これは理想の自分をあきらめることではありません。
 成功への貪欲さは自分の持ち味として保ちながら、勇気を出して自分の現在位置を受け入れることで、確実に成功への階段を登れるようになります。

 自己愛が未成熟な人は、「自分は他人とは違う特別な存在だ」と思いたいために、ありのままの自分を認められなくなっています。
 ありのままの自分は、何もとりえがなくちっぽけな人間だと実は思っているのかもしれません。
 特別でなくても自分には確かに価値があると思えるようになりたいものです。

 自己愛が未成熟であると、「思い描く理想の自分」と「なにもない無価値な自分」の間を行ったり来たりして躁と鬱を繰り返しがちです。
 一方、自己愛が成熟している人は、「等身大の自分」を認められるので、成功も失敗も安定した心で受け止められるのです。

 人からの賞賛や羨望を強く望んでいる人ほど、一流企業や一流ブランドに憧れます。
 一流をまとった自分は特別だと思いたいのです。
 しかし、それは他人の威光を借りているにすぎず、本当の自分の価値とは無関係です。
 そんなものに頼らなくても、ありのままの自分に価値があることを知るべきです。

 他人の価値観に振り回されるのも、自己愛が未成熟な人の特徴です。
 誰かが高く評価したものを盲目的に価値が高いと信じているのです。

 大事なのは、
 他人がどう思っているかではなく自分がどう思っているか、
 それが自分にとって本当に重要なものなのか、
 です。

 自己愛が未成熟な人は、常に「自分の存在価値」を求めています。
 しかし、何かを成し遂げなければ存在価値はないと思っているとしたら、それは間違いです。
 自分が存在することに理由などありません。
 一生懸命生きている自分には既に十分な価値があることを認められるといいですね。

自己愛が未成熟な人の課題②「他人の気持ちにも意識を向けること

 自己愛が未成熟な人の課題2つ目は、「他人の気持ちにも意識を向けること」です。

 他人は、自分が主人公の物語の中では脇役かもしれませんが、自分もまた他人の物語の中では脇役です。
 自分を尊重するのと同様に他人も尊重することを忘れたとき、人との絆が切れて孤独感にさいなまれるようになってしまいます。

 自己愛が未成熟な人は、自分に意識を向けるのと同じかそれ以上に、他人にも意識を向けることで、自己愛が成熟していきます。

 他人に意識を向けるためには、他人に共感することを意識する取り組みが役に立ちます。

他人に共感するためのポイント4つ

・相手の痛みに気づく
・相手の人生に思いを馳せる
・相手の気持ちを自分の推測で判断しない
・相手も自分と同じ一人の人間であることを忘れない

まとめ

◆成功をめざして頑張っている人ほど自己愛性パーソナリティーの傾向が強い可能性が高い

◆自己愛性パーソナリティーの傾向が強い人は、
・「私は偉い」「私は賢い」「私は美しい」「私は特別だ」と思いたがる
・自分の思い通りにならないことが耐えられない
・自分の満足のために他人を利用する

◆自己愛性パーソナリティー傾向が強い人は、自己愛が未成熟であると考えられる

◆未熟な自己愛を成熟させるための4つのポイント
・等身大の自分を認める
・特別でなくても自分には確かに価値があると知る
・他人の気持ちにも意識を向ける

主な参考文献:
『自己の分析』『自己の修復』『自己の治癒』(ハインツ・コフート、みすず書房)
『自己愛と依存の精神分析~コフート心理学入門』(2002、和田秀樹、PHP研究所)
『自己愛性パーソナリティ障害』(2018、市橋秀夫、大和出版)

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笹氣健治プロフィール

メンタルトレーナー・心理カウンセラー・ビジネス書作家
株式会社グラン・スポール代表取締役

1967年・仙台市生まれ。国際基督教大学を卒業後、NTT(東京支社)に勤務。1996年、地元仙台に戻り、スポーツクラブ「グラン・スポール」の経営に携わる。東日本大震災を乗り越えて、市内に5店舗を展開中。今や仙台を代表するスポーツクラブとなっている。

現在は、アスリートやビジネスパーソンへのメンタルトレーニング、ストレス対処やコミュニケーションをテーマにした講演、非常勤講師(東北学院大学、2014~2018)や、心の問題解消をサポートする活動を精力的に行っている。現在19冊の著作がある(売上累計25万部超)。

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